を神経系統《しんけいけいとう》へぴりっと刺《さ》すと、とたんに癒《なお》っちまうんじゃないかな」
「それは反対だよ」
四方が首を振った。
「なぜだい、なにが反対だい」
「だって、そうじゃないか。神経細胞は電線と同じように、導電体《どうでんたい》だ。しかも弱い電流を通す電路なんだ。そこへ高圧電気をかけるとその神経細胞の中に大きな電流が流れて、神経が焼け切れてしまう。そうなれば、人間は即座《そくざ》に死ぬさ」
「いや、電流は流されないようにするんだ。そうすれば神経細胞は焼け切れやしないよ。ねえ、隆夫君、そうだろう」
「さあ、どっちかなあ。ぼくは、そのことをよく知らないから、答えられない」
この問題は懸案《けんあん》になった。
そこへ隆夫の母が、甘味《あまみ》のついたパンをお盆《ぼん》にのせてたくさん持って来てくれたので、三人はそれをにこにこしてぱくついた。やがてお腹がいっぱいになると、急に疲れが出て来て、睡くなった。それだから、その日はそれまでということにして、解散した。
さて、その夜のことである。
隆夫はひとりで実験小屋にはいった。
彼は、今日とって来た録音が気がかりで仕方が
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