ん。おとなしくしなさい。母さんはここにいますよ」
母親は涙と共に娘をなだめる。
それからの三十分間は電波収録班大苦闘《でんぱしゅうろくはんだいくとう》の巻《まき》であった。なにしろ目がさめた名津子は、好きなように暴れた。弟の三木も何もあったものではなく、空中線はいくたびか折られそうになった。母親と三木は、そのたびに汗をかいたし、隆夫たちははらはらしどおしだった。そして予定よりも早く実験を切りあげてしまった。
三木に別れをつげて、残る三人の短波ファンは、そこを引揚げた。
三人は隆夫の実験小屋へ機械をもちこんで、しばらく話し合った。すると、二宮がしかつめらしい顔をして、こんなことをいいだした。
「人間のからだが生きているということはね。からだをこしらえている細胞の間は、放電現象が起ったり、またそれを充電したり、そういう電気的の営《いとな》みが行われていることなんだとさ。だから三木の姉さんみたいな人を治療するのには、感電をさせるのがいいんじゃないかな。つまり電撃作戦《でんげきさくせん》だ」
「それは電撃作戦じゃなくて、電撃|療法《りょうほう》だろう」
「ああ、そうか。とにかく高圧電気
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