すると共に、病人の口から出ることばとを同時録音することも出来るようになっていた。
いよいよその仕事が始まった。
病人の目をさまさないうちに、睡眠中病人の脳から出ている電波をとらえることになった。隆夫は受信機の調整にあたり、三木は空中線を姉の頭の近くへ持っていって、いろいろと方向をかえてみる役目を引受けた。あとの二人は録音や整理の仕事にあたる。
深夜《しんや》の影
「どうだい、何か出るかい」
受信機が働きはじめたとき、三木はすぐそれをたずねた。
「いや出ない」
「だめなのかな」
「そうともいえない、とにかくいろいろやってみた上でないと、断定《だんてい》はできない」
隆夫は、波長帯《はちょうたい》を切りかえたり、念入りな同調《どうちょう》をやったり、増幅段数《ぞうふくだんすう》をかえたりして、いろいろやってみた。
「この機械の受信波長《じゅしんはちょう》は、どれだけのバンドを持っているのかね」
四方《よつかた》が、隆夫に聞く。
「波長帯は、一等長いところで十センチメートル、一等短いところでは一センチの千分の一あたりだ」
「そうとうな感度を持っているねえ」
「いや、そ
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