は、思いもつかなかったようなことが、わずかの実験で“おやおや、こんなこともあったのか”と分っちまうんだ。頭より手の方を早く働かせたがいいよ」
「まあ、とにかく、その実験をやることにして、ぼくはその準備にかかるよ。隆夫君、手つだってくれるね」
 三木がそういったので、万事《ばんじ》は決った。もちろん隆夫は協力を同意したし、二宮も手を貸すといい、四方までが、ぼくにも手伝わせてくれと申出た。
 四人の協力によって、三日のちに、機械の用意ができた。
 その日の午後、一同は三木の家で、仕事を始めた。
 名津子《なつこ》の病床には、母親が病人よりもやつれを見せて、看護にあたっていた。まことに気の毒な光景だった。
 一同がその部屋にはいったとき、病人はすやすやと睡っていた。なるべく音のしないように、機械を持ちこんだ。
 機械は、電波をつかまえるため小さい特殊型空中線《とくしゅがたくうちゅうせん》と、強力なる二次電子増倍管《にじでんしぞうばいかん》を使用し、受信増幅装置《じゅしんぞうふくそうち》と、それから無雑音《むざつおん》の録音装置とを組合わせてあった。 そして脳から出る電波の収録《しゅうろく》を
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