「気が変になった人を治療する方法は、これまでに医学者によって、いろいろと考え出された。しかしだ、実際にこの病気は、あまりなおりにくい。それから、今までとは違った治療法を考えだす必要があると思うんだ。そうだろう」
「それはわかり切ったことだ」
 誰もみな隆夫のいうことに異議はなかった。
「そこでぼくは考えたんだが、そういうときに、病人の脳から出る電波をキャッチしてみるんだ。そしてあとで、その脳波を分析するんだ。それと、常人の脳波と比較してみれば、一層なにかはっきり分るのではないかと思う。この考えは、どうだ」
「それはおもしろい。きっと成功するよ」
「いや、ちょっと待った。脳波なんて、本当に存在するものかしらん。かりに存在するものとしてもだ、それをキャッチできるだろうか。どうしてキャッチする。脳波の波長はどの位なんだ」
 四方勇治《よつかたゆうじ》が、猛然と新しい疑問をもちだした。
「脳波が存在するかどうか、本当のことは、ぼくは知らない。しかし脳波の話は、この頃よくとび出してくるじゃないか。でね、脳波はいかなる理論の上に立脚《りっきゃく》して存在するか、そんなことは今ぼくたちには直接必
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