脳波収録《のうはしゅうろく》
なぜ隆夫は、どきんとしたか。
そのわけは、それを聞いたとき、彼が知っている三木の姉|名津子《なつこ》の声が、昨日の深夜、図らずも自分の実験小屋で耳にした女の声によく似ていることに気がついたからであった。実は昨夜もあの声を聞いたとき、どうも聞きおぼえのある声だとは思ったが、それが名津子の声に似ているとまで決定的に思出すことができなかったのだ。
(ふーん。これは重大問題だぞ)
隆夫は、腹の中で、緊張した。
しかし彼は、このことを三木たちに語るのをさし控えた。それは万一ちがっていたら、かえって人さわがせになるし、殊《こと》に病人を出して家中が混乱しているところへ、新しい困惑《こんわく》を加えるのはどうかと思ったのである。
そのかわり、彼はこれを宿題として、自分ひとりで解いてみる決心をした。そして、いよいよ確実にそうと決ったら、頃合《ころあい》を見はからって三木に話してやろうと思った。
「どうして。君は急に黙ってしまったね」
二宮が、隆夫にいった。隆夫は苦笑した。
「うん。ちょっと、或ることを考えていたのでね」
「何を考えこんでいたんだい
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