原因によって起っているかを突き止めることだ。
 しばらく隆夫は、天井にとりつけた高声器から聞えてくるくしゃくしゃいう受信音に耳を傾けた。
「なんといういやな声だろう。何といっているのか、ちっとも分りやしない。うむ待てよ。これは参考のために録音しておこうや」
 隆夫は大急ぎで腰掛からとびあがった。そして録音機をとりに、となりの部屋へいった。


   苦しい会話


 録音が行われた。
 約五分間にわたって、録音された。
 隆夫は、その録音した受信機をもとにして不明瞭《ふめいりょう》な音声をなんとか分析して、その言葉の意味を読みとるつもりだった。
 それには少々装置の用意がいる。二三日はかかるであろう。
 隆夫は急に疲労をおぼえた。さっきから緊張のしつづけであったためであろう。となりの寝室へ行って、しばらく睡ることにした。あいかわらず高声器からは、わけのわからない言葉がひきつづき出ていた。隆夫は、受信機のスイッチを切ろうと手を出したが、そのとき気がかわって、スイッチは切らないでそのままにしておくことにした。
 隆夫は、軽便寝台《けいべんしんだい》の上に毛布にくるまって、ぐっすり睡った。

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