もりだが、あるいはどこかに違った配線をしているのかもしれない。早くそれを調べたいが、今はそのひまがない。なにしろ電波が今、現《げん》に、この受信機にキャッチされている最中なんだから……。
「はて、これは何を喋《しゃべ》っているのかな」
 隆夫は、第三段目になって、ようやく高声器から今出ている高声が、怪音というべき種類のものであることに注意をそそぐようになった。
「なにかいっている。調子が日本語のようだが、どうもよく分らない。ああ、そうか。音がゆがんでいる上に、雑音もかなり交《まじ》っているんだ。まず雑音をとってみよう」
 この雑音は、電波それ自身に交《まじ》っている雑音であった。その雑音を除《はぶ》くうまい方法を隆夫は知っていたから、早速《さっそく》その装置を持って来て、取付けた。
 すると、受信音は急にきれいになった。耳ざわりな雑音が除かれたためである。
 だが、あとに残った音声は、やはりアーティキュレーションがよくなかった。不明瞭《ふめいりょう》なのであった。
 音声のゆがみは、直す方法がない。
 もしありとすれば、それは受信機を構成している部品の特性の悪さや真空管のまずい使い方に
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