いるような、男とも女とも分らない、いやな声であった。
いったい何者なのか。電波怪異《でんぱかいい》はこのときに始まる。
雑音《ざつおん》の推理
まさしく、高声器から、音声が出ているのだった。それは、何をいっているのか、意味が分らなかったが、とにかくそれが音声であることは了解された。
怪音だ。いや怪音声だ。
隆夫は、うれしくて、ダイヤルをいろいろとひねくりながら、その怪音に聞きほれた。怪音が彼の気にいったのではなく、彼が長い間かかって組立てた極超短波受信機《ごくちょうたんぱじゅしんき》が始めて働いてくれたことがうれしかったのだ。
「すごい。すごい。たしかに働いている」
彼は、にこにこ顔でひとりごとをいったが、そのうちに気がついたことは、このような一時的の配線では、どこかの電波を受信できながら、前に本格的にきちんと配線したときには、なぜ働いてくれなかったかということである。
「はじめの本格的配線のときには、いくども調べたんだから、配線にまちがいはないはずだ。どうもおかしいねえ」
わけが分らない。あとで、一時的配線をよく調べてみよう。それは本格的配線と同じにやったつ
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