に於て植物のため取押えられ処刑された者は、約四千四百万名に達する。
 彼ら脱飛者たちの多くが目指すところは、龍骨座密集星図に属するスバル太陽系の七個の惑星であるが、彼らがこの宇宙移住に成功するためには最短路をとるとして約一千光年の距離を翔飛せねばならず、実際に目的地へ到達し得る者は全体の一パーセント程度であろう。
 しかし地球人類としては、植物より受ける過酷なる圧迫による絶望と、第五氷河期襲来の予測とにより、危険を承知で、この最後の賭博に参加する外ない。

 人暦六千五百五十年

 世界の混乱は極度に達する。
 混乱を生ずる因子は、何といっても内憂外患の激化にある。すなわち地球外の他の惑星からの侵入者は四千万に達し、これを防衛する地球植物と地球人類とは実力に於て常に不利なる立場にあり、而も地球植物、殊に可動植物は地球人類を服従|乃至《ないし》無力化せんとして到る所に於て暴行を事とし、史上最高の暗黒時代である。
 この混乱の究極に於て、智能の点で地球生物より段違いにすぐれている他の惑星よりの侵入者が勝利を占めそうに思われる時機があったが、何故か彼らは突然撤退を開始したので、宇宙の侵入者に
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