の絆を断ち切って自由軌道を採用することになろう。
 これらの大工事や自力運行のため、原子エネルギーの活用は幾何級数的に増大される。が、そこに或る種の危機を孕《はら》んでいるようである。

 人暦九千百十一年

 遂に第五氷河期が襲来!
 月は遂に海水に触れ崩壊する。その破片と塵土は地球全面を蔽い、空は暗黒と化し、続いて気温降下が始まり、それは急激に降下して行き、地表は迅速に氷河期的景観に変わる。
 植物の凍死するもの数知れず、世界の交通は杜絶し、秩序はもはや保たれなくなる。さしもの世界支配族たりし可動植物たちも、その生物的弱点により生存を脅されるに至り、殊に彼らの無反省な本能主義は、このような天災に対する用意を欠いていたので、第五氷河期の襲来は彼らにとって致命的打撃である。
 尚、当時残存した約三千名の地球人類は行方不明となる。彼らの多くは、地底定住の努力半ばに於て、坑道内で死滅。

 人暦八千百九十四年

 支配当局の厳重なる取締と警戒にも拘らず、地球外に脱飛せる地球人類の総数は、この年に於て最大記録に達し、この一年間だけで九十五万五千余名と推定される。そして脱飛に成功せず、離陸以前
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