《きょうしゅく》している態《てい》で、ペコペコ頭を下げた。「組長さんは、スウィッチの図面を書きたいから御持ちになるというので、そんな簡単な御用ならと、栗原は帳簿に書かないで、御貸ししたんです。ところが、今急に、拡張《かくちょう》工事係の方から、在庫《ざいこ》になっている乙型《おつがた》スウィッチは全部数を揃えて出せという命令なんで。どうも已《や》むを得ず、ソノ……」
「文句はいいや。さア、早く持ってゆけ」
わし[#「わし」に傍点]は、抱《かか》えていた乙型スウィッチを、彼の前に、さしだした。
乙型スウィッチというのは、長さ一尺五寸、幅《はば》七寸の、細長い木箱《きばこ》に収められた大きなスウィッチで、硝子《ガラス》蓋を開くと、大理石《だいりせき》の底盤《ていばん》の上に幅の広い銅《どう》リボンでできた電気|断続用《だんぞくよう》の刃《は》がテカテカ光り、エボナイト製の、しっかりした把手《ハンドル》がついていた。このスウィッチ一つで、鳥渡《ちょっと》したモートルの開閉は充分できるのであった。
「栗原さん、俺が持ってゆくよ」
横の方から、思いがけない、違った声がして、頭髪《かみのけ》
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