をモシャモシャにした若い男が、姿を現した。
「だッ、誰だ。手前《てめえ》は……」
わし[#「わし」に傍点]は、戸口の蔭から、イキナリ飛び出した男に、駭《おどろ》いた。
「こいつは、横瀬《よこせ》といいましてネ」若い男の代りに栗原が弁解した。「この栗原の遠縁《とおえん》のものです」
「何故ひっぱってきたんだ」
「いまお願いして、倉庫で、私の下を働かせて、いただいてるのです。というのは、下町《したまち》の薬種屋《やくしゅや》で働いていたのが、馘首《くび》になりましてナ、栗原のところへ、転《ころが》りこんできたのです」
「ふウん、お前さん、薬屋かア」
珍らしそうに、スウィッチの表や裏を、眺めている若い男に、わし[#「わし」に傍点]は、声をかけた。
「薬屋だったんです」その横瀬は、ぶっきら棒の返事をした。
「どうだろうな。わし[#「わし」に傍点]は、お前さんに、ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「骨の折れねえことなら、手伝いますよ」
「これッ――」栗原が駭《おどろ》いて、横瀬の汚い職工服を、ひっぱった。
「骨は折れねえことだ。じゃ、栗原、お前の若い衆を、ちょいと借りたぜ」
「へえ、ようが
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