夜泣き鉄骨
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大鉄骨《だいてっこつ》が

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)電気|断続用《だんぞくよう》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#全角CC、1−13−53]
−−

     1


 真夜中に、第九工場の大鉄骨《だいてっこつ》が、キーッと声を立てて泣く――
 という噂が、チラリと、わし[#「わし」に傍点]の耳に、入った。
「そんな、莫迦《ばか》な話が、あるもんか!」
 わし[#「わし」に傍点]は、検査ハンマーを振る手を停めて、カラカラと笑った。
「そう笑いなさるけどナ、組長さん」その噂を持ってきた職工は、慄《おび》えた眼を、わし[#「わし」に傍点]の方に向けて云った。「昨夜のことなんだよ、それは……。火の番の、常爺《つねじい》が、両方の耳で、たしかに、そいつを聴いたよッて、蒼《あお》い顔をして、此《こ》のおいら[#「おいら」に傍点]に話したんだ。満更《まんざら》、偽《いつわ》
次へ
全40ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング