んた》、友三《ともぞう》、雲的《うんてき》」
「そうだ、そうだ」
「もっとも、人間一人で動くようなクレーンじゃない」
「ああ、すると誰が動かしたんだ」
「組長さん。もう我慢が出来なくなった。どうか、ここから出して下せえ」
「俺も、出るッ」
「いや、出ることならぬ」わし[#「わし」に傍点]は呶鳴《どな》った。「クレーンを動かした者が、判らぬ限り」
「組長さん、そりゃ無理だよ」源太が泣き声を出した。「ありゃ、生きてる人間のせいじゃないんだ」
「なんだとォ――」
「あのクレーンには、何か怨霊《おんりょう》が憑《つ》いていて、そいつがクレーンの上で、泣いたり、クレーンを動かしたりするんだ」
「ああッ――」
 それを聞くと、誰もが、痛いところへ触《さわ》られたように、跳《と》び上って駭《おどろ》いた。
「おお、組長」雲的《うんてき》が云った。「誰かが、外で喚いているようですぜ」
「なに、外で喚いているッ」わし[#「わし」に傍点]は、予期しないことに吃驚《びっくり》して云った。なるほど、多勢の声で、何やら喚いているのが、遥《はる》かに聞こえるのであった。「じゃ、みんな、外へ出よう」
 一同は、ワッ
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