中電灯が、揃って点くと、大分《だいぶ》場内《じょうない》が明るくなって、元気がついたようだった。
「クレーンを動かすスウィッチが、入っているかどうかを調べるんだ。オイ、政《まさ》はいるかッ」わし[#「わし」に傍点]は、クレーン係の、若い男を呼んだ。
「へええ」と政は、死人のような顔を、こっちへ向けた。「どうか、その役割は、勘弁しとくんなさい」そう云って、彼は、手を合わせて、こっちを拝《おが》んだ。
「莫迦《ばか》いうな」わし[#「わし」に傍点]は叱りつけた。「手前《てめえ》が、調べねえじゃ、係りで無えコチトラには訳が判らねえじゃねえか」
 尻込みする政を、両脇《りょうわき》から引立てて、捜査に取懸った。
「このスウィッチは、開いている」一同が入った入口の側の壁上で、その入口から六、七間奥まったところに大きいスウィッチが取附けられてあった。その硝子蓋《ガラスぶた》の上から指《ゆびさ》しながら、クレーン係の政が呻《うな》った。「このスウィッチが、開いているなら、クレーンの上へ、電気が行きっこ無いんです」
「だが可怪《おか》しいぞ」とわし[#「わし」に傍点]は云った。「クレーンは確かに動いた
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