ら、手さぐりに、一人、二人と、人間の身体を数《かぞ》えて行った。彼等は、わし[#「わし」に傍点]の手が触《さわ》る度《たび》に、非常に驚愕《きょうがく》している様子であった。そして、申し合わせたように、隣り同士がピタリと身体を寄せ、手を繋《つな》ぎ合わせていた。
「十三人!」たしかに、全員が、入口に近い壁際《かべぎわ》に、鮃《ひらめ》のように、ピッタリ、附着しているのであった。
 それから、時《タイム》が軸の上を、静かに移ってゆくのが、誰にもハッキリと感ぜられた。時の経つのに随《したが》って、一秒また一秒と、恐怖の水準線《すいじゅんせん》が、グイグイと昇ってくるのだった。
 二分、三分、四分、五分――
 夢中で、隣りの男の手を、握りしめた。冷い汗が、腋《わき》の下に滲《にじ》み出して、軈《やが》てタラリと肋骨《あばらぼね》を、駆け下りた。
「キィーッ」
 一同は、はッと、呼吸《いき》をつめた。
「キィーッ、キィーッ」
 呀《あ》ッ、いよいよ、泣きだしたのだ。彼等はそれを鼓膜《こまく》の底に聴いた瞬間、板のように全身を硬直させた。
「キィーッ、キィーッ、ぐうッ、ぐうッ」
 彼等は、見えな
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