。門衛から借りてきた鍵で、それを外《はず》させた。ガチャリと、錠の開いたのが、骨の崩れる音のようだった。
「さァ皆、懐中電灯を消すんだ」わし[#「わし」に傍点]は扉《と》の前に突立って云った。「静かに、中へもぐりこんだら、たとえ、どんな吃驚《びっくり》するようなことが起ろうと、声を立てちゃ、ならねえ。よしかッ。懐中電灯も、わし[#「わし」に傍点]が命令するまでは、どんなことがあっても、点《つ》けるなよッ。折角《せっかく》の化物を、遁《に》がしちまうからな。いいかッ」
一同は、それぞれ、肯《うなず》いた。
重い鉄扉を、細目にあけて、ブルブル慄《ふる》えている組下連中を、一人一人、押込んだ。最後にわし[#「わし」に傍点]が入って、扉をソッと閉めた。
工場《こうば》の中は、油の匂いが、プンプンしていた。そして、鼻をつままれても判らぬほど、絶対暗黒《ぜったいあんこく》であった。何かしら、闇の中から、大きな手が出てきて、喉首《のどくび》をグッと締めつけられるような気味の悪い圧力を感じたのだった。
誰もが、黙っていた。番号をかけるわけにもゆかない。わし[#「わし」に傍点]は、戸口のところか
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