けているらしかった。
「叱《し》ッ――」わし[#「わし」に傍点]は、睨《にら》みつけた。
 わし[#「わし」に傍点]は、逡巡《しゅんじゅん》するところなく、押入をあけた。上の段に入っている蒲団《ふとん》を、静かに下ろすと、その段の上に登った。そして、一番端の天井の板を、ソッと横に滑らせた。そこには、幅一尺ほどの、長方形の、真暗な窖《あなぐら》がポッカリ明いた。そこでわし[#「わし」に傍点]は、両手を差入れて、天井裏を探《さ》ぐったが、思うものは、直ぐ手先に触れた。手文庫《てぶんこ》らしい古ぼけた函《はこ》を一つ抱《かか》え下ろしてきたときには、横瀬は呆気《あっけ》にとられたような顔をしていた。
 わし[#「わし」に傍点]は、急製の薄っぺらな鍵を、紙入の中から取出すと、その手文庫を、何なく開くことに、成功したのだった。その中には、貯金帳や、戸籍謄本《こせきとうほん》らしいものや、黴《かび》の生えた写真や、其他《そのた》二三冊の絵本などが入っていたが、わし[#「わし」に傍点]が横瀬の前へ取出したものは、手文庫の一隅《いちぐう》に立ててあった二〇※[#全角CC、1−13−53]入《いり》の硝
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