に退いた。
「では、始めます」
 地下戦車の蓋《ふた》があいて、岡部伍長が顔を出し、信号旗をふった。
 加瀬谷少佐は、それにこたえて、手をふった。
 岡部が中に引込むと、また一つの首が、出てきた。そして手をふった。
「やあ、ご苦労!」
 それは、同乗を命ぜられた工藤上等兵《くどうじょうとうへい》だった。
「萱原准尉《かやはらじゅんい》。工藤は、命令をうけて、別にいやな顔をしなかったか」
「いや、大悦《おおよろこ》びでありました。工藤上等兵と来たら、生命を投げだすようなことは、真先《まっさき》に志願する兵でありまして……」
「ははは、まさか、今日のところは、一命には別条《べつじょう》はあるまい」
「そうですかなあ。私は、心配であります」
 そういっているとき、地下戦車の蓋は、ぱたんと閉った。車体のうしろの排気管《はいきかん》から、白い煙が、濛々《もうもう》と出てきた。
「うむ、いよいよ出るらしい」
 加瀬谷少佐をはじめ、試験部隊の一同は、固唾《かたず》をのんで、問題の地下戦車の上に視線をあつめる。
 そのときであった。
 岡部伍長の乗った地下戦車が、ぶるぶるんと震《ふる》えたようである。
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