未来の地下戦車長
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)岡部《おかべ》一郎

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|昨日《さくじつ》も、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)かん[#「かん」に傍点]だけで
−−

   かわった手習《てなら》い


 岡部《おかべ》一郎という少年があった。
 彼は、今年十六歳であった。
 彼の家は、あまりゆたかな生活をしていなかった。それで彼は、或《ある》電灯会社につとめて、もっぱら電灯などの故障の修理を、仕事としている。なかなか一生けんめいに働く一郎であった。
 彼は、中学校へもあがれなかったが、技術は大好きであった。そのうち、電気工事人の試験をうけて、一人前の電気工になろうと思い会社の係長さんに、いつも勉強をみてもらっている。
 ところが、その一郎が、近頃、なにに感じたものか、毎朝起きると机に向って墨《すみ》をする。
 墨がすれると、こんどは、古い新聞紙を机の上にのべて、筆に、たっぷり墨の汁《しる》をふくませる。それから、筆を右手にもって、肘《ひじ》をうんと張り、新聞紙の
次へ
全92ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング