ろから火が出て、停電しちゃったとさ。早く来て、直してくれというんだ。ぐずぐずしていると、代用食《だいようしょく》を作るのがおそくなって、会社へも、おそばをもっていけないから、早く来て、直してくれだとさ。だから、お前、すぐ行ってくれ」
「へえ、ばかに、長いことばを使って、修理請求をしてきたものだね」
「それは、そのはずだよ」
「えっ」
「あたまが悪いなあ。電話をかけてきたのは、おそば屋さんだもの。おそばは、長いや。あははは」
「なあんだ。ふふふふ」
仕事をしていた係の人々も、一度にふきだした。
「これこれ、笑い話は、後にして、岡部、自転車にのって、直《す》ぐ、おそば屋へいって来なさい。一分おくらせれば、それだけ、国家の損失なんだから……」
係長さんも、にやにや笑いながら、一発痛いところを、一郎たちにくらわせた。
戦車博物館
その日の夕方、一郎は、家へ帰った。
弟や妹が、総出で、お膳の仕度をしていた。やがて、母親が、お勝手から、大きな丼《どんぶり》にもりあげたおかずをもって、お膳《ぜん》のところへ来た。それから、まるで戦場のように急《いぞ》がしくて賑《にぎや》かな食事
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