かし、われわれ技術者たるものはダネ、何か考えついたことがあったら、すぐ実物《じつぶつ》をつくってみることが必要だ。技術者は、すぐ技術を物にしてみせる。そこが技術者の技術者たるところでもあり、誇りでもある。――いや、むつかしい演説になっちまったなあ。くだいていえば、早く実物をつくりなさいということだ。考えているだけで、実物に手を出さないのでは、技術者じゃないよ。実物に手をだせば、机のうえでは気のつかなかった改良すべき点が見つかりもするのだ。おい、未来の地下戦車長どの。こいつは一つ、しっかり考え直して、出直すんだな。私は、たのしみにしているよ」
そういって、係長さんは、一郎の頭に手をやろうとした。
「おっと、おっと――」
一郎は、あわてて、体をかわした。
「あははは。これは、うっかりしていた。あははは」
「あははは」
一郎も笑った。全く、厄介《やっかい》なところへ瘤が出来たものである。
そのとき、向うから、一郎を呼ぶ声があった。
「おーい、岡部。通《とおり》のそば屋さんから、電話があったんだ」
「おそばなんか、だれも註文《ちゅうもん》しませんよ」
「註文じゃないよ。コンセントのとこ
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