「いいえ、つきません。これだけでたくさんであります」
「それはすこし乱暴だぞ」
「自分は、そうは思いません。これで大丈夫だと思います」
「そうかなあ」
 加瀬谷少佐は、しばらく考えこんでいたが、
「ふむ、なにごとも勉強になることじゃから、大至急、それを実物に作らせてみよう。そして、その上でお前は、運転してみるのだ」
「は、承知しました」
 机上《きじょう》で、念には念を入れ、ふかく考えてみることは、大いに必要であるが、しかし考えただけで万事が解《と》けると思っては、大まちがいである。つまり、考えだけでは、解けないことがあるのだ。それを考えに迷いこんで時間におかまいなしに、いつまでも考えていると、結局そのものは、解けない問題ばかりがあまりにふえてきて、泥田《どろた》へ足をふみこんだように、ぬきさしならぬこととなる。
 だから、考えるのも、或る程度にとどめなければならぬ。そして早く、実物をつくって実行してみることが、解決を早くする。そのうえ、実物をつくって実行してみると、机の上では、とても気がつかなかったような困難な問題がひょこひょことびだしてきて、行手《ゆくて》を阻《はば》むものである
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