をつっかけて、彼は、とことこと歩きだしたが、五六歩あるいて、急にはっとした思いいれで、その場に立ちどまり、
「……忘れないうちに、いまのすばらしい発明を手帖に書きとめて置かなければならないと思ったが……ちぇっ、なあんだ、ばかばかしい。わはははは」
 彼は、だれも見ていないのに、きまりわるげに、あたまを、ガリガリとかいて、寝台の方へ廻れ右をした。そしてまた、毛布の中に、もぐりこんだ。
「ちぇっ、夢だったか、ばかばかしい。行軍していると、水車小屋のかげから現れたもぐらというのが、体の大きいやつで牛ぐらいあるもぐらの王様だったから、こいつは使えるなと思ったんだ。そのもぐらの先生め、わしの鼻に廻転錐《かいてんきり》を直結しなさいという。なるほど、これは何というすばらしい考えだと……いや、目がさめてみれば、あれまあ、なんというばかばかしい夢をみたもんだな! な、なあーんだ」
 彼は、毛布の中で、くっくっと、いつまでも笑いがとまらなかった。
 その夜は明けて、翌日となった。
 岡部伍長は、腫《は》れぼったい瞼《まぶた》をこすりながら、また自分の机にかじりついた。
「きょうこそは、なんとか形をこしら
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