だ、この少年が、理科ずきと見え、たいへんねっしんに、もぐらの話をききたがっていることだけは、わかった。
「このもぐらというけだものはこんなかわいい顔をしているが、悪いやつじゃ」
と、お百姓さんは、足で、もぐらの腹を、ぽんとけった。もぐらは、くるっと腹を上に出した。もぐらは、すこしもうごかない。
「このもぐらは、死んでいるの」
「うん、もぐらは、すぐ死ぬるよ。お陽さまにあたれば、すぐに死んでしまうのだよ。だから、昼間はじっと土の中に息をころしていて、夜になると、ごそごそうごきだして、作物をあらすわるい奴じゃ」
お百姓さんは、もぐらの悪口ばかりをいった。しかしもぐらは、畑の害虫をたべるから、お百姓さんのためにもなっているのだ。
「おじさん、もぐらは、どういう具合に、土を掘るの」
一郎は、大事なことを、たずねた。
「さあ、それはよく知らんねえ。しかし、もぐらの鼻は、かたくて、ほら、こんなにとがっているだろう。それから前脚なんか、こんなに掌《て》が大きくて、しかも外向《そとむ》きについているだろう。つまり、鼻と前脚とで、やわらかい土を掘るのにちがいないよ」
お百姓さんは、自分の知ってい
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