ね」
「ちがいますよ。そのもぐらのことですよ」
一郎は、お百姓さんの足許《あしもと》にころがっているもぐらを指した。
「このもぐらに、用があるのかね。ははあ、商売ぬけ目なしだ。もぐらの毛皮を売ってくれというのだろう」
「ああそうか。もぐらの毛皮は貴重な資源だな」
と、一郎は、一つものおぼえをしたが、
「ねえ、おじさん。ぼくは、もぐらの毛皮よりも、もぐらが、どうして、土を掘るのか、それを知りたいのです。どうぞ、おしえてください」
それをきいて、お百姓さんは、おどろいて目をまるくした。
「なんじゃ、もぐらが、どうやって、土を掘るか、知りたいというのか。なるほど、お前さんは、まだ子供だから、なんでもめずらしくて、そんなことが知りたいのだな」
「そうじゃありませんよ。ぼくは、今、地下戦車をこしらえようと思って、一生けんめいになっているんです。だから、土掘りの名人のもぐらのことを、ぜひ勉強して、出来れば、もぐら式の地下戦車をこしらえてみたいなあ」
一郎のいうことは、一郎にはわかっているが、お百姓さんには、ちんぷんかんぷんだった。第一、地下戦車なんてものは何だか、さっぱり見当がつかない。た
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