りだったが、この失敗のために電動機の捲線《けんせん》をすっかりやりなおさなければならないことになった。
失敗は失敗だが、彼の地下戦車研究は、一段とすすんだのであった。
「どうも、あのロータリーは、まずいやり方だ。除雪車なら、雪を外へはねとばしただけでいいんだが、地下戦車となると削《けず》った土は、自分が掘った穴へすてるしかないんだから、もっと考え直さなくては、だめだ。、どうしたら、いいかしら」
一郎は、失敗に屈《くっ》しないで、もう次の研究を考えていた。地下戦車は穴を掘るだけでなく、削《けず》った土をどこにやるか、その始末をよく考えておかないと、実用にならない。
これは中々むつかしい研究問題である。一郎は、廃品回収の車をひきながら、それについていろいろと頭をしぼったが、どうもいい工夫がなくて困っていた。
そのうちに、春になった。
春にはなったが、地下戦車の問題は、一向すすまなかった。ところが或る朝のこと、彼は郊外を歩いているうちに、思いがけないおもしろいものを見つけた。
お百姓のおじさんが、もぐらを捕《とら》えているのであった。畠をあらすもぐらが、なぜそんなに彼の注意をひい
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