愉快でしようがないという風に見えた。彼が、小一時間あまりも、それをつづけているうちに、どうしたわけか、ぷーんとへんな臭いがしてきたではないか。
「おやッ、へんな臭《にお》いだぞ。ゴム線が燃えるような臭いだ」
 そのとき、彼は、やっと気がついた。ロータリー車を手許へひきよせ電動機の上にさわってみると、
「あつッ」
 手がつけられないように熱い。そして、ぷーんと、ゴム臭《くさ》い臭《にお》いがし、白い煙が電動機の中から、すーっと昇っていることに、始めて気がついた。
「し、失敗《しま》った。電動機を焼いてしまった」
 と、叫んだが、もう後《あと》の祭《まつり》だった。
 電動機は、いつの間にか、まわらなくなっていた。どうして、こんなことになったのか。
 後で、一郎が考えたところによると、これは、電動機が、むりやりにひどい仕事をさせられたため、焼けてしまったのであった。このような小さい電動機に、雪をかかせるのは、むりであった。雪がやわらかいうちはいいが、雪が固くなると、とてもいけない。そのうちに、線と線との間に火花がとんで、全くまわらなくなったわけである。
 彼は、あとでまた扇風機になおすつも
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