。本当に赤いや」
 ぐさっと、シャベルを土の中に突き入れる。
「赤土は、きれいなものだ。おや、また、水が出てきたな。どうも、このへんに、地下水のみちがついているらしい。防空壕のほかに、井戸を掘ってもいいなあ」
 ぐさっと、またシャベルを土の中に突きこむ。土が、天井から、ぱらぱらと落ちる。蝋燭《ろうそく》の灯が、ゆらゆらと、消えそうに揺れる。
「もう、ずいぶん掘った。このうえは、ちょうど空地《あきち》になっているはずだ。見当をまちがって、鬼河原《おにがわら》さんの家の下を掘ると、ひどい目にあうぞ。いつだか、鬼河原さんの家令《かれい》とかいう人が、かんかんになって怒って来たからなあ、まあ、鬼河原さんの庭園はよけて掘ることにしよう」
 一郎はそう思いながら、つるはしをえいッとふるったが、そのとき天井の土がぱらぱらと大量に落ちて来たと思うと、ちょろちょろ音がして上から水が落ちて来た。はて、へんなことになったわい。


   人間地下戦車の行先


 地下壕《ちかごう》の天井《てんじょう》から、水は、ますますいきおいよく落ちてくる。
「地下水にしては、いきおいがはげしいぞ」
 と、岡部一郎は、け
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