いたね。じゃあ、みんなで土をはこぼうや」
「あたいも、やるよ」
「僕もやる。うちのお母《かあ》ちゃんがいったよ。防空壕ならうちでつくってもいいからよく見ておいでとさ。僕ここで手伝って、家でもつくるよ」
 二郎の友だちの少年が、土はこびを手伝うこととなった。防空壕が出来るというので、一郎の母親も、これを叱《しか》らなかった。また、今手伝っておけば、いざ空襲《くうしゅう》というとき、その中に入れてくれるというので、土はこびに参加する少年が日ましに数をまして来たのであった。
 くすぐったいのは、一郎だった。
(はじめは人間地下戦車の訓練をやるつもりだったけれど、これはとうとう防空壕をつくることになったぞ。しかし防空壕は必ず作らなければならないものだし、それにこうしてみんなで土に慣れるということはいいことだ。とにかく自分は、まっ先に立ってやらなければならない)
 そう思って、一郎は、半分は地下戦車をつくる上において土になじむためと、あと半分は、これを利用して、防空壕をつくるためと両方に目標をおいて、相《あい》もかわらず、穴の奥へはいりこんで、土を掘っていった。
「ははあ、これが本ものの赤土だな
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