くと、いつの間にか、通路がふさがってしまって、外へ出られない。土を退《の》けることが、たいへんな仕事であることが、しみじみと感じられてきた。
 そこで一郎は、思い悩んで、ぼんやり考えこんでいると、弟の二郎が、遊び仲間の子供たちを沢山つれて、やってきた。
「ほらネ、防空壕だろう。うちの兄ちゃんが、ひとりで、こしらえているのだよ。どうだい、すげえだろう」
「二郎ちゃん。この防空壕には何人はいれるの」
「それは……それは、ずいぶんはいれるだろうよ」
「じゃあ、僕もいれておくれよ」
「だめだめ、信《しん》ちゃんなんか。信ちゃんは、ねぐるいの名人で、ひとの腹でも何でも、ぽんぽん蹴るというから、おれはいやだよ」
「そんなこと、うそだい。その代り、僕、二郎ちゃんの兄ちゃんの手伝いをするぜ。うんと働くぜ」
「でも、そんなこと、だめだい」
「おい、二郎」
 二郎が、後をふりかえった。
「なんだい、兄ちゃん」
「お前たちで、土をはこべよ。防空壕が出来たら、土をはこんだ人は、みんな中にはいってもいいということにするから。その代り、土をはこばない人は、ぜったいに、いれてやらないよ」
「そうかい。おい、みんな聞
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