かしい岡部地下戦車兵団出現の、そもそも第一|頁《ページ》であったのである。だが、今ここでは岡部将軍も只の一少年工に過ぎなかった。
蘭丸《らんまる》と数値《すうち》
「係長さん、僕は、けさ、人間地下戦車になって、活動を開始しましたよ」
岡部一郎は、会社へいってからお昼の休みの時間に彼をかわいがってくれる係長の小田さんに此《この》報告をした。
「なんだって。その人間なんとかいうのは、なんだね」
係長さんは、鼻の下の小さい髭《ひげ》をこすりながら、一郎の顔をみた。
「人間地下戦車ですよ」
「人間地下戦車? なんだい、それは……」
係長さんは、目をぱちぱちして、鼻の下をやけにこすった。この係長さんは、わからないことがあると目をぱちぱち、鼻の下をやけにこするくせがある。そうやると、頭がよくなって、理解力が出てくるらしい。
そこで一郎は、けさ、うちの庭で、シャベルをもって、土を掘ったことや、母や弟から、防空壕をつくっているのだと思われたことを話した。
「……人間地下戦車は、だめですね。ほんのぽっちりしか、穴が掘れないのですもの……」
と、一郎が残念そうにいうと、係長さんは「
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