うだ。真似をすることなら、猿まわしのお猿だって、うまくする。よし、自分で考えよう!」
「なにを、ひとりごとをいっているの、兄《にい》ちゃん」
後で一番とし下の弟の二郎の声がした。
「二郎、だまっておいでよ」
「いやだい。兄ちゃん、いくよ。お面《めん》!」
ぽかりと、一郎の頭に、新聞紙をまいてつくった代用品の竹刀《しない》が、ふりおろされた。
「ああッ、いたい!」
一郎は、とび上った。なんとまあ、災難《さいなん》な頭の瘤だろう。ちょうど、頭のてっぺんにある。弟までに、その痛いところを殴《なぐ》りつけられて……。
だが、一郎は、逃げ足の早い弟を、追おうともしなかった。じつにそのとき、彼は、神様のお声をきいたように思ったのである。
「そうだ。係長さんが、“おい岡部、その瘤は、もぐらもちの真似をして、こしらえた瘤なんだろう”といった。そうだそうだ。僕は、なにをおいても、自分が地下戦車になったつもりで、まず自分で穴を掘ってみよう。それがいい」
彼は、えらいことを悟《さと》った!
人間地下戦車
次の日から、一郎の生活が一変した。
彼は、朝早く起きると、例の手習いをすませ
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