かにこの切抜帳は、りっぱな戦車博物館である。第一号館は、もう頁《ページ》が残り僅《わず》かであった。
(やあ、もう陳列場所が、いくらもあいていないぞ。近いうち、第二号館の建築に、とりかからなくては……)
一郎は、なかなか忙しい身の上だ。
さて、「第一号館」を、いくども、ひっくりかえしてみたが、そこにある戦車は、いずれも地上を駆《か》ける戦車ばかりであった。こいつを、このまま、地下へはこび入れても、さっぱり前進させることができないことは、明白であった。
「はて、これだけ、りっぱな戦車がたくさんあっても、参考になるものは一つもないぞ」
一郎は失望を禁ずることができなかった。
全く、いやになってしまった。彼は、ごろんと、うしろにたおれて、ぼんやり考えこんでいたが、そのうち、ふと、誰かのいったことばを思い出した。
“欧米など、外国の工業に依存していたのでは、日本にりっぱな工業が起るわけがない。はじめは苦しいし困るかもしれないけれど、日本は日本で一本立ちのできる独得の工業をつくりあげる必要がある。それは一日も早く、とりかからなくてはならないことだ!”
一郎は、むっくり起き上った。
「そ
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