絶後《くうぜんぜつご》の味をつけたものであって、この調理法は学者アインシュタインの導《みちび》き出したものであった。故《ゆえ》にこの燻製肉を一度|喰《くら》えば、あたかも阿片《あへん》において見ると同じ麻痺的症状《まひてきしょうじょう》を来《きた》し、絶対的人間嫌いが軟化《なんか》し、相対的《そうたいてき》人間嫌いと変るという文字通り苦肉《くにく》の策を含んだものであった。果してその効果がありたると見え、金博士は両眼《りょうがん》さえ閉じ呼吸《いき》もつかずに、残余《ざんよ》のノクトミカ・レラティビアをフォークの先につきさして喰うわ喰うわ……。
「そこで金博士。わが大統領のお願い申す一件のことですが、ぜひとも金博士の発明力《はつめいりょく》を煩《わずら》わして、絶対に沈まない軍艦を一|隻《せき》、至急|御建造《ごけんぞう》願いまして、当方へ御下渡《おさげわた》し願いたいのであります。お分りですかな。つまり、いかなる砲弾なりとも、いかなる重爆弾《じゅうばくだん》なりとも、はたまたいかなる空中魚雷《くうちゅうぎょらい》なりとも、その軍艦に雨下命中《うかめいちゅう》するといえども絶対に沈まな
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