不沈軍艦の見本
――金博士シリーズ・10――
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)米英《べいえい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)日本対|米英《べいえい》
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     1


 さても日本対|米英《べいえい》開戦以来、わが金博士《きんはかせ》は従来《じゅうらい》にもまして、浮世《うきよ》をうるさがっている様子であった。
「ねえ、そうでしょう。白状なさい」
 と、その客は金博士の寝衣《ねまき》の裾《すそ》をおさえて話しかけるのであった。金博士が暁の寒冷《かんれい》にはち切れそうなる下腹《したばら》をおさえて化粧室にとびこんだとたん、扉の蔭に隠忍待《いんにんま》ちに待っていたその客は、鬼の首をとったような顔で、金博士の裾をおさえて放さないというわけである。
「これこれ、そこを放せ。早く放さんか。一大爆発が起るわ。この人殺しめ」
 博士は、身ぶるいしながら、鍋《なべ》のお尻のように張り切ったる下腹《したばら》をおさえる。客は、そんなことには駭《おどろ》く様子もなく、
「大爆発大いに結構。その前に一言でもいいから博士|直々《じき
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