相場では……」
「ああ、もうし、ちょっとお待ち下さい。この件を御承諾《ごしょうだく》下さいますならば、シカゴの大屠殺場《だいとさつじょう》に、新《あらた》に大燻製工場《だいくんせいこうじょう》をつけて、博士にプレゼントするとも申されて居りますぞ」
「あほらしい。シカゴは既に日本軍の手に落ちて、自治委員会が出来ているというじゃないか。お前さんは、わしを偽瞞《だま》しに来なすったか」
「と、とんでもない。ええとソノ、私の今申しましたシカゴというは、元のシカゴではなくて、今回ユータ州に出来ましたるヌー・シカゴのことです。そのヌー・シカゴの大屠殺場に……」
「これこれ、空虚なる条件をもって、わしをたぶらかそうと思っても駄目じゃ。もう帰って貰いましょう」
「空虚というわけではありませんぞ。わが大統領も、全く以て真剣なんです。その証拠には、ここに持って参りましたる燻製見本を一つ御風味《ごふうみ》ねがいたい。これはわがアメリカ大陸にしか産しないという奇獣《きじゅう》ノクトミカ・レラティビアの燻製でありまして、まあ試みにこの一|片《ぺん》を一つ……」
と、特使は、隠し持ったるフォークとナイフを電光石
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