ことをなさず、その後は一九四一年十三月、一九四一年十四月、エトセトラというが如く同じ年号でつづけていくこととなった。だから十三月というは、欧洲でいう一九四二年一月のことと思えばよろしいのである)――その十三月八日において、彼ルーズベルトは、彼の特使を、かの金博士に面会さすべく遂《つい》に成功したのであった。
「わしはルーズベルトは嫌いだよ。あいつはわしの大嫌いな人間じゃからな」
 金博士は、最初の一撃でもって、特使をごつんとやっつけた――つもりであった。しかし最初の一撃には、既に体験ずみのアメリカ人のこととて、かの特使はくらくらとしながらも首をたて直し、
「そのことはまた別の機会にゆっくり弁明することにいたしまして、ねえ金博士、わが大統領は、博士において今回お願いの一件さえお聴届け下されば、次のアメリカ大統領として、金博士を迎えるに吝《やぶさか》ならぬといわれるのです。どうです、すばらしいではありませんか、あの巨大なる弗《ドル》の国の大統領に金博士が就任《しゅうにん》されるというのは……」
「この上海《シャンハイ》では、弗は依然として惨落《さんらく》の一途を辿《たど》っているよ。今日の
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