至《ないし》第五十八輯」、曰く「世界|瘋癲病《ふうてんびょう》患者|妄想要旨類聚《もうそうようしるいじゅう》」、曰く「新青年《しんせいねん》――金博士|行蹟記《ぎょうせきき》」、曰く「夢に現れたる奇想集」等々、一々書き切れない。
 この奇妙なる文献の山と、彼らのくそ真面目な顔とを見くらべて、もしや彼らが十二月八日をショックとして云いあわせたように気が変になったのではないかと疑念《ぎねん》を抱かせるものがあるのであったが、二三の者に小当りに当ってみた結果によると、変になったわけでもないらしい。そして彼らの整理簿の上には、これまた云いあわせたように、次の如き格言様《かくげんよう》の文句が見やすきところに大書されてあった。すなわち、
“世の中に、真に不可能なるものは有り得ず。ナポレオン”
 又曰く、
“不可能なるものこそ最も恐るべく、且つ大警戒すべし。フランキー・ルーズベルト”


     2


 そのフランキー・ルーズベルトであるが、彼は十三月八日(十三月は誤植《ごしょく》にあらず、アメリカでは一九四一年の大惨敗《だいざんぱい》を記念するために従来の如く十二月末日を過ぎても年号を改める
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