うな現実が存在し得ることを感受するの能力がなかったのだ。今にしてはっきり知る、自分たちの頭脳は揃いも揃って発育不全であったことを! ああ情けなや)
 と、彼らの多くは、それ以来すっかり気力を失って、右向け右の号令一つ、満足にかけられないという始末《しまつ》であった。
 その後一ヶ月を経《へ》て、彼らはようやく正気《しょうき》らしいものに立ち帰ったようである。その証拠には、あれから一ヶ月程してから、彼らはしきりに忙《いそが》しそうに仕事を始めたことを以て窺《うかが》うことが出来る。
 但しその仕事というのが、ちと奇抜すぎはしないかと思われる種類のものであった。彼らは、どこから手に入れたか、机上《きじょう》に夥《おびただ》しい文献を積み上げて、一々それを熱心に読み且《か》つ研究を始めたのであった。
 その文献なるものを、ちょいと覗《のぞ》いてみると、曰《いわ》く「世界お伽噺《とぎばなし》、法螺《ほら》博士物語」、曰く「カミ先生|奇譚集《きたんしゅう》」、曰く「特許局|編纂《へんさん》――永久運動発明記録全」、曰く「ジーメンス研究所|誇大妄想班《こだいもうそうはん》報告書第一|輯《しゅう》乃
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