わしは正直者じゃ。やったことはやったというが、いくら訊《き》いても、やらんことはやらぬわい。これ、もう我慢《がまん》が出来ぬぞ、この殺人訪問者め!」
大喝一声《だいかついっせい》、金博士は相手の頤《あご》をぐわーンと一撃やっつけた。とたんにあたりは大洪水《だいこうずい》となったという暁の珍事《ちんじ》であった。
というようなわけで、あれ以来博士は、あられもない濡衣《ぬれぎぬ》をきせられて、しきりにくすぐったがっている。かの十二月八日の博士の日記には、いつもの大記載《だいきさい》とは異《ことな》り、わずかに次の一行が赤インキで書き綴《つづ》られているだけであった。もって博士の驚愕《きょうがく》を知るべし。
“流石儂亦顔負也矣! 九排日本軍将兵先生哉!”
とにかく愕《おどろ》いたのは金博士ばかりではない。全世界の全人間が愕いた。殊に最もひどい感動をうけたものは、各国参謀軍人であった。あの超電撃的地球儀的|広汎《こうはん》大作戦が、真実《しんじつ》に日本軍の手によって行われたその恐るべき大現実に、爆風的圧倒を憶《おぼ》えない者は一人もなかった。
(いや、今までの自分たちの頭脳は、あのよ
前へ
次へ
全29ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング