が、蚊《か》のような細い声でいった。
 しかし大統領は、もう雷撃にはなんの興味をもっていなかった。何百本の空中魚雷をうちこもうと、到底《とうてい》あの驚異軍艦を撃沈することは出来ない。今や彼の灼《や》けつくような好奇心は、かくも不思議な奇蹟を見せる驚異軍艦の構造の謎の只一点に集中されていたのであった。
「見せてくれ、あの驚異軍艦の中を! わしは直《す》ぐ、あれを真似して百|隻《せき》ばかりこしらえるんだ」
 大統領は、あえぎながら、金博士の胸倉《むなぐら》をとって哀訴《あいそ》した。
「御覧になれば、なんだこんなものかと思われるですよ。はははは」
 と、金博士は謙遜とも皮肉《ひにく》とも分からない笑い方をして、大統領をはじめ、建艦委員たちを案内して、驚異軍艦ホノルル号についていった。


     6


 艦《ふね》には、ふしぎにも、水兵一人居らなかった。そしてぷんぷんとゴムくさかった。
「一言にしていえば、つまりこの艦は、艦体《かんたい》を厚いゴムで包んだものと思えばよろしい」
 と、博士はひどく気のなさそうな声でもって説明を始めた。
「しかし本当は、もっと複雑な構造をもっているん
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