ってしまった。
こんどこそは沈んだらしいと思っていると、間もなく水柱が、ざざーざっと海面に落ちこぼれると、あーら不思議、金博士の驚異軍艦ホノルル号の厳然たる姿が、神のごとくはっきり浮び出たではないか。
「ああっ、ちゃんとしている……」
嘆息《たんそく》と畏敬《いけい》の声が同時に起る。
「三十八弾命中!」
と、空中からの報告が届いたのは、このときであった。
「なんだ、三十八弾命中? しかし、ホノルル号は顛覆《てんぷく》もしないでちゃんと浮いているぞ」
と、大統領の嘆声《たんせい》。そのとき金博士が傍《そば》へ近づいて、ホノルル号からすこし放れた海面において新たにぽかりぽかりと盛り上る大きな泡《あわ》をさして、何やらいって、ふふふふと笑った。大統領は、蒼褪《あおざ》めた長い顔をしきりに縦《たて》にふって肯《うなず》く。
「ふーん、三十八弾、いずれも甲板から艦底に通り抜けたか。しかも穴一つ明かず……。これは驚異じゃ。ハワイ海戦の前に、これを知って居たらなあ。ちえっ、遅かった」
と、大統領は、かぶっていた帽子を手にとって、両手でびりびりと引き破った。
「雷撃機出動です」
ヤーネル
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