とがめ、
「ああ大統領閣下。金博士ごとき東洋人にたぶらかされてはなりませぬ。第一おかしいではありませんか。命中したら必ず艦に穴が明くはず、穴が明けば必ずそこから海水が入って、たちまち轟沈《ごうちん》及至《ないし》撃沈《げきちん》となるはず。ですから、あんなに厳然《げんぜん》としているはずはありませんぞ」
「わっはっはっ」
 金博士が、あたり憚《はばか》らぬ大声で笑い出した。
「これ金博士。あなたは司令官を侮辱《ぶじょく》なさるか」
「わっはっはっ、ヤーネル君。さっき君は、たしかに五弾命中と自《みずか》らいったではないか。それにも拘《かかわ》らず、今さら一弾も命中せざるごとくいうのは何事だ。それとも、たった五千メートルの距離から、静止《せいし》せる巨艦を射撃して、二十門の砲手が、悉《ことごと》く中《あた》り外《はず》れたとでも仰有《おっしゃ》るのかね。なんという拙劣な砲手ども揃いじゃろう」
「ああ、うーむ、それは……」
 ヤーネルの赤い赭《あか》い顔が、急にカンバスの如く白くなった。
 金博士は、それ見ろといわんばかりに、提督の顔を尻目に見て、
「さあ、ルーズベルト君、ぐずぐずしていては
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