ゆるがしているだけで、穴一つ明かないばかりか、砲弾の炸裂《さくれつ》した様子もない。
「おい、本当か、五発命中というのは」
 大統領が、狐《きつね》にばかされたような顔でヤーネルを睨《にら》みつけた。
「た、たしかに五発命中です。ですが、どうもふしぎですなあ、炸裂しません」
 といっているとき、驚異軍艦から左の方へ千メートルばかり放《はな》れたところの海面か、どういうわけか、むくむくと盛りあがってきて、それは恰《あたか》も、小さい爆雷《ばくらい》が海中かなり深いところで爆発したような光景を呈《てい》した。しかもそのむくむくは、勘定《かんじょう》してみると、都合五つあった。
「何だい、あれは」
 大統領は怪訝《けげん》な顔。
 そこへ、さっきから置き忘れられたような金博士が、小さい身体をちょこちょことのりだしできて、大統領に耳うちをした。
「ええっ、そ、そうか!」
 大統領の愕《おどろ》きは一方ではなかった。
「ふーん、命中弾は、たちまち艦内を通り抜けて、艦底から海底へ突入、そこで爆発したのだというのか。こいつは驚異じゃ」
「何ですって?」
 と、ヤーネルが大統領の歎声《たんせい》を聞き
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