も始めたまえ。早くキンメル提督《ていとく》に命令したがいいじゃないか」
「キンメル提督? ああ神よ、彼の上に冥福《めいふく》あれ。おい、ヤーネル提督、砲撃方《ほうげきかた》始め」
「オーケー、フランキー」
 と、そこで両洋聯合艦隊司令官ヤーネル提督は、電話機をとって、砲撃命令を下したのであった。
 戦艦マサチュセッツとインディアナの四十センチの巨砲、併《あわ》せて二十門は、ぎりぎりと仰角《ぎょうかく》をあげ、ぐるっと砲門の向きをかえたかと思うと、はるか五千メートルの沖にじっと静止している驚異軍艦ホノルル号の舷側《げんそく》に照準《しょうじゅん》を定《さだ》めた。
「照準よろしい」
 報告が、ヤーネルの耳に届く。
「うん。撃て!」
 提督は耳をおさえて云った。
 轟然《ごうぜん》と砲門は黒煙《こくえん》をぱっと吹き出して震動《しんどう》した。甲板《かんぱん》も艦橋も、壊《こわ》されそうに鳴り響き、そしてぐらりと傾斜《けいしゃ》した。
「命中、五発!」
 驚異軍艦のまわりには十五本の水柱《すいちゅう》が立った。のこりの五発は、たしかに命中したとある。しかし驚異軍艦は、かすかに檣《マスト》を
前へ 次へ
全29ページ中19ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング