士を乗せると、沖合さして二十三ノットの速度でのりだしていった。
「ルーズベルト君。この艦《ふね》はもっと速度《スピード》が出るのじゃないかね」
「うむ、それはその何だ、むにゃむにゃ。あああれか。あれが博士の率《ひき》いてきた驚異《きょうい》軍艦ホノルル号か。うむ、すばらしい。全く浮かべるくろがねの城塞《じょうさい》じゃ」
「うふふん、そうでもないよ」
「いや、謙遜《けんそん》に及ばん。余は、ああいう世界一のものに対して、最も愛好力《あいこうりょく》が強い」
と、ルーズベルト大統領は艦橋《かんきょう》から身体をのりださんばかりである。
「さあ、どうか御遠慮なく、あのホノルル号を砲撃せられよ」
「やってもいいのか。しかし……」
大統領が、訝《いぶか》しげに博士の方を振りかえった。
「どうぞ御遠慮なく」
「でも、実弾《じつだん》をうちこむと乗組員《のりくみいん》に死傷《ししょう》が出来るが、いいだろうか。尤《もっと》も死亡一人につき一万|弗《ドル》の割で出してもいいが……」
「弗は下がっているから、一万弗といっても大した金じゃないね。とにかくそれは心配をしないでよろしい。早速砲撃でも何で
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