に出掛けよう。おいシモン。建艦《けんかん》委員を非常呼集《ひじょうこしゅう》して、試験場へくりだすようにそういえ。それから主力艦インディアナとマサチュセッツとを、すぐ沖合へ出動させよ」
 命令を出すと、大統領は仕度《したく》のため別室へ入った。やがて彼は、黒のオーバーに中折帽《なかおれぼう》、肩から防空面《ぼうくうめん》の入った袋をかけて玄関に立ち現れた。
「金博士、どうぞ」
 大統領は、玄関に横付になっているぴかぴか黒光りに光った自動車を指《ゆびさ》して、そこに待っていた金博士にいった。二人は車上の人となった。
「オーケー。出発だ」
 自動車は走り出した。と思ったら、とたんに、ぷすーっという音がして、がくんと横にかたむき、速度が落ちた。
「狙撃《そげき》?」
 と、金博士はちょっと不意打《ふいうち》のおどろきを示した。しかし大統領は割合《わりあい》におちついていた。そして冬瓜《とうがん》のような顔をしかめていった。
「どうも近頃のタイヤは、弱くて不愉快だ。なにしろ再生《さいせい》ゴムだからな」


     5


 新鋭戦艦マサチュセッツは大統領とその幕僚《ばくりょう》、それに金博
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