くせに、気の利かぬことじゃ。尤《もっと》もアメリカの軍人というやつは……」
「おっと、皆まで仰有《おっしゃ》いますな。それよりもさっき申上げた不沈軍艦《ふちんぐんかん》の件ですが、博士のお力で、左様《さよう》なものが出来るでございましょうか。それとも覚束《おぼつか》のうございますかな」
 特使は、わざと博士の気にさわるような言葉を使う。
「つまらんことを訊《き》くものじゃない。この世の中にわしに出来ないものなどは、一つもないわ。不沈軍艦なぞ造ろうと思えばわけはない。十ヶ月の猶予《ゆうよ》期間さえあれば、不沈軍艦一隻、なんの造作《ぞうさ》もなく造って見せるわ」
 と、博士は例によって、至極《しごく》事《こと》もなげに言ってのける。
「えええッ」
 と、仰天《ぎょうてん》し、狂喜《きょうき》したのは、かの特使であった。
「本当でございますか、それは……あのう、十六吋の砲弾、いや十八吋の砲弾、二十|吋《インチ》の砲弾をうちこまれても沈まないのですぞ」
「砲弾をいくらうちこんでも、一つだって穴が明《あ》きはしない」
「えええッ。そいつは豪勢《ごうせい》ですね。いや砲弾ばかりではない。空中からし
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